クーラーのアイドルアップ装置取付 ― 2012年08月03日 20時08分46秒
で、いきなり完成画像から。
BMW2002のエンジンルームですが、クイズ。
いったいどこが今回取り付けたアイドルアップ装置でしょうか。
答え。下の画像の赤い部分です。
~にしやんの夏休みの旧車自由研究 その1~
「他車からの流用パーツでクーラーのアイドルアップ装置を取付け」
クーラーをつけるとコンプレッサーが回り、エンジンに負荷がかかります。このとき、わがマルニでは回転数で300rpmほど落ち込むために、アイドリングが低くなってしまい、ギクシャクしてとても運転しにくくなってしまっていました。ときには止まっちゃうことも・・・。
また、クーラーは、コンプの電磁クラッチ、コンデンサーの冷却ファン、室内ユニットのブロワーも稼動させるので、電気を大食いします。夜間の走行はほとんどしないのですが、走行中なら問題ないですが、信号待ち中とか、ヘッドライトやワイパーなどを使っていたらもっと電気的に苦しくなってしまうでしょう。(マルニのオルタネータは45Aと発電量が少ない)
そんなわけで、クーラー稼動中はアイドリングの回転数を上げて、オルタの発電量を増やしたいところなのです。
この諸問題を解決するのがアイドルアップ装置。クーラーが稼働している時に自動的にアイドリング回転数を上げてくれる夢の装置です。(笑)
うちのには最初無かったので、手っ取り早く、夏場はキャブのスロットルストップスクリューを1回転ほど時計方向に回してアイドリングを1300rpmほどに上げて、アイドリングが落ち込まないようにしのいでいました。しかし、コンプがオフになったらアイドリングが高めの1300回転ということで、燃費に良くない。ただでさえ暑い季節なので、エンジン冷却にもよくない!
今回、クーラーの冷媒を入れ直したのをいい機会として、アイドルアップ装置の導入となりました。
もちろん、いつもの他車中古パーツの流用で自作です。(^_^;)
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アイドルアップの仕組みとしては、クーラーのオンと連動して、キャブのスロットルを少し押す装置を取り付ければいいのです。そこで必要になるのが、ダイアフラムアクチュエーターとバキュームソレノイドの二つのパーツです。
(プッシュ式の電磁ソレノイド単体で直接、キャブのスロットルを押す方法もありますが、これ以上電気を使いたくなかったのでこの方法は採用しませんでした)
【ダイアフラムアクチュエーター(FICD)】
このパーツは、エンジンの負圧がかかると、ダイアフラムの仕組みによりロッドが出るか、または、引っ込むかする部品です。マルニのソレックスDIDキャブレターでは位置的に、ロッドが「出るタイプ」が必要でした。
そこでヤフオクに出ているキャブの画像をいろいろと観察した結果、日産パルサー(型式:E-FN14)のものが使えそうだと判断。ほかに、PAOやBe-1、マーチなどでも同じものが使用されているようです。(他メーカーのアクチュエーターは引くタイプのものばかりで使えそうにありませんでした)
このダイアフラムアクチュエーターはFICD(Fast Idle Control Device)とも呼ばれているようです。運転中の急なスロットルオフで不完全燃焼ガスを発生させないように、ロッドの突き出しによって1500回転あたりからゆっくりとスロットルを閉じるようにしてくれる、“ダッシュポット機能”を併せ持つ装置です。回転落ちがゆっくりなために、街中などでのクラッチ変速操作がスムーズになります。
さてこのFICD、負圧バキュームがかかっていない普通の状態ではロッドを手で軽く押すとゆっくりと5ミリ分沈んでいきました。オリフィスからエアが抜けているような感じです。(前述のダッシュポット機能が働いている)
次に、内径2ミリのバキュームホースをつないで口で吸って負圧を与えてみると、今度はロッドが5ミリ分出てきました。これで動作は正常。
ロッドの反対側には調整ねじらしきものがありますが、ロッド動作の長さを調整するものかと思っていたら、(未確認ですが)これはどうも、ダッシュポット動作の速度を調整するもののようです。とりあえず中くらいにしておきました。
【三方向切替弁 ソレノイドバルブ】
エンジンの負圧バキューム経路を切り替えるための電磁弁です。これによって前述のアクチュエータを制御します。こちらもヤフオクで入手。
ただし、2本の管のみついているこのような↓バージソレノイドバルブではダメです。
(↑このタイプは2本の管しかないので使えません。サーモスイッチがオフになった時にアクチュエーター内部に残った負圧を逃がしてくれず、アイドルアップしたまんまになっちゃいます。実験済み。(^_^;) )
そこで、バキューム経路を切り替えることのできる3管ソレノイドを探します。
4WD車には、車内手元スイッチで2WDと4WDを切り替えるスイッチがありますが、その機構に使われているソレノイドらしいです。今回使ったのは、ダイハツのミラジーノ4WDの中古パーツ、1500円。
12VがかかっていないOFFのときは、青の経路にエアが通ります。
12VがかかったONのときは、赤の経路にエアが通ります。
配線ですが、極性はありません。カプラがないので、カナノコで樹脂部をカットし、リード線をハンダ付けします。片側はアース(マイナス側)につなぎ、一方の配線はクーラーのサーモスイッチにつなぎます。
つまり、クーラーオンでコンプの電磁クラッチが入ったらアクチュエーターにバキューム負圧がかかればいいのです。その結果、アクチュエータがスロットルを5ミリ分押してくれるので、アイドリング回転数が上がる、という仕組みです。
以下に今回のアイドルアップ装置の図を示します。
------解説-------------
クーラーをつけ(ブロワースイッチをON)、サーモスイッチがONになると(コンプのクラッチが入り)、バキュームソレノイドはC-Bの経路となり、エンジン負圧がアクチュエータにかかる。これにより、Dではロッドによって5ミリ分プライマリ側のスロットルが押され、結果、実質600~700回転ほど回転数アップとなる(アップする量はD部分の調整ネジで変えられます)。
エバポが十分に冷えたらサーモスイッチが自動的にOFFになるので(コンプのクラッチも切れ)、バキュームソレノイドはA-Bの経路に切り替わり、エンジン負圧はカットされ、アクチュエータ内部の負圧はAの大気圧で逃げ、Eではロッドが5ミリ分ちぢみ、プライマリのスロットルが戻され、結果、アイドルが下がる。
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旧車のためのクーラーアイドルアップ装置に流用できるパーツが入手できたら、あとは、取付けのこまごまとした作業です
・ダイアフラムアクチュエーター(FICD)をインマニに取り付けるL型ステーの製作。変なかたちですが、切った貼ったの苦労のあとです。
3ミリ鋼鈑を溶接で切った貼ったして制作。高さや角度、微妙な位置合わせが難しい。
取り付けは、インマニにそれ用のボルト穴があいていましたよ。
・ソレックスキャブのスロットルを押す部分の加工。
マルニのキャブのアームの材質がとても硬い素材で、手持ち鉄工ドリルでは穴あけができなかった。これはまいった・・・・
仕方ないので、調整ねじの付いたアーム先端部をヤフオクでゲットしたパルサーのキャブから切り取って溶接・移植。結局これで正解。
アイドルアップさせる回転数をここで微妙に調整できます。ただし調整範囲は3ミリ分。
調整ボルトの先端部に、アクチュエータのロッドが当たって少し擦れている跡があるのがわかります。
・バキュームソレノイドの取付と配線
適当な場所にステーを介して取り付け。配線カプラー部分を加工して配線を取り出し。アースをとり、もう一方はサーモスイッチの+側(電磁クラッチ稼動)につなぐ。
・バキュームホース(内径2ミリ)の取り回し
インマニからデスビの遅角ダイアフラムへと繋がるバキュームホースにT型分岐をかませてバキュームを取る。
これらを取付け後、パーツの動作確認。
まずは、コンプの電磁クラッチをキャンセルしての動作確認。
クーラーオフ時のアイドル回転数を800回転に設定しました。
クーラーのサーモスイッチがオン→バキュームソレノイドが開く→アクチュエーター(FICD)のロッドが5ミリ出る→キャブのスロットルを5ミリ分押す→エンジン回転数がアイドリング1500回転になった。
おお!ちゃんとアイドルアップしている!
続いて本番。コンプの電磁クラッチを連動させて動作確認。
結果、クーラーオンでタコメーターはアイドリング1200回転を指しました。
成功!
5ミリ押されて700回転アイドルアップして、300回転をコンプに持っていかれて、差し引き400回転のアップということですね。
しばらく乗り回して問題ないことを確認。
いいですね~~。
こうして、トータル3週間かかったアイドルアップ作戦は無事終わりました。
~かかった費用~
日産パルサーの中古キャブ(アクチュエーターをもぎ取り)ヤフオク 送料込6,700円
ミラジーノ4WD用三方向切替ソレノイド ヤフオク 送料込2500円
内径2ミリのバキュームホース1m ネットのゴム屋 送料込1,200円
(う~んもうちょっと安くできると思っていたが・・・)
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